『父の背中…』

『父の背中…』『食と音楽のマリアージュ・セッション』スープに使ったふきのとう

昨日、親父から「今日ランチに行きたいけどカウンター空いてる?」っと電話が来ました。
「本当は、明日が弘のお店の最後だから明日行きたいんだけど、明日は病院だから」と
じつは、親父は一昨日退院してきたばかりで…
退院明けの昨日でした…
ここのところ、親父は入退院をずっと繰り返していて、何にも無ければ、「退院したばかりなんだから今日はやめとこうよ」とランチだけでなく外出も控えてもらうのだけど、昨日は少し悩んで折り返しの電話でOKをしました。

ヒロッシーニ最後の日(前日ですが…)という特別な日であることは、もちろんあります
それ以上に、息子のお店だからという単純な理由ではなく、ヒロッシーニの13年の時間に親父の存在は大きかったからです

まだ薄氷の張る川辺のクレソン採りから始まり、春の山菜、ふきのとうや僕の大好きなわらび、夏は、あの暑さの中、野辺山まで行ってキャベツやブロッコリー、レタスを軽トラいっぱいに取ってくる
そして秋、何と言っても、あの天然キノコです。2年前から僕も親父に場所を教えてもらって採りには行ってますが、あれだけの種類にあの量はホント圧巻です!今になって、親父の凄さをしみじみ感じています。
そして冬…
霜が降りて、凍った野辺山の畑に寒〆ほうれん草や白菜、野沢菜を何日も何往復もかけて採りに行ってくれています。
今年は僕も何回か採りに行きましたが、日中でもマイナスの野辺山はさすがにきついです…
今年は少し体調がいいとお母さんと一緒に採りに行ってくれていました。
それが無理に繋がってるのかな…と無責任に聞こえますが思っています
「ほうれん草が無くてもお店は営業できるから」と何度言っても
それでも体調が良ければ、動けるなら、ほうれん草が足りているのか心配になってしまい採りに出かけてしまいます…
そう思ってしまう、親父のその気持ちを抑えつけるのは、やっぱりできないかな…

すべてを書ききれませんが、ヒロッシーニに来店してくださったお客様は必ず、父の採って来てくれた食材を召し上がったことがあると思います
もう何年も何年も
ヒロッシーニの時間に親父の存在は、とても大きかったのです

だから、昨日はランチに来てもらいました。
食が細くなったのか、いつもは簡単に食べていたパスタを少し残していました…
最後に二人で、エントランスの花の前で写真を撮りました
「一緒に写真を撮ろう」と親父に言ったのは、人生で初めてのことです
意外に良く撮れていたので良かったです。

今日でヒロッシーニの営業は終わります
本当は今日来てほしかったな…

写真は…
12月2日のイベント
『食と音楽のマリアージュ・セッション』
その時のスープに使ったふきのとうです
あまり知られていませんが、ふきのとうは12月の今頃から顔を出します。そして雪が降り…雪の下で、じっと春を待っているのです
どうしても、このイベントで使いたくて、親父に毎年採って来てくれる場所を聞きましたが、何日も見つからず…諦めていたら、セッションの前日、親父から「ふきのとう採っておいたぞ!」と電話がありました。
小さな小さなフキノトウでした…
10粒くらいのわずかな量でしたが、僕には抱えきれないフキノトウでした
涙が止まらない、そんな食材でした ーシェフー

思い

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