兄貴

もう20年以上前・・・?
ホテル時代のまだまだ小僧の頃
一番かわいがってくれた大好きな先輩、菊地さんのお店に 先日東京へ行った際、寄らせていただきました。
ホテル西洋銀座や竹芝のインターコンチネンタルホテルにもいた方ですが、いずれフレンチスタイルの居酒屋を独立したいと考えていたため、10年以上前、新橋の居酒屋に転職し、その業態を学ばれていました。
が、5~6年前からその居酒屋(160席×5店舗)すべてを見る総料理長になってしまい
現場に立って料理を作ることはほとんどなくなり
パソコンに向かって数字やスタッフのシフトばかりを毎日見る人間になっていったそうです。

そんな菊地さんが昨年、東上野に10坪・14席の
小さなフレンチ居酒屋を独立しました。
しかもたった一人で・・・
当然トイレ掃除から洗い物、電話に、レジの締めまですべて一人!
「お飲物はセルフサービスになっております。お好きな物を選んでご自由に・・・
ワイングラスは棚にあります。冷えたグラスは・・・栓抜きは・・・」
そんな貼り紙のある一人で経営する小さなお店です。

「正直、飲み物はお客さんに助けてもらいながら
自分の今日一番の料理を作らせてもらっているよ」と言っていました。

僕ら4人以外にもお客さんはいましたが、ホント自由に立ってファミレスの
ドリンクバーのニュアンスでワインを選び勝手に空けて飲む。
シェフは「おまたせしました」と料理の説明をしながらテーブルにお出しする。
ほろ酔いになれば自然とお客さん同士も仲良くなり
シェフも一緒に小さな店内は笑顔があふれる一つの空間に変わる。

2年前に菊地さんと飲んだ時、独立の相談をされました。
心の中で、もう独立して6年以上たっていた自分は
どこか菊地さんを超えた感を正直持っていました。
当然少なからず先日もそんな気持ちで行っていました。

あのバタバタの中、お皿を下げて洗い物をしながら電話をとって、お客様と話しもしながら
あの豚のローストを出された時、自分が情けなく、そしてはずかしくなりました・・・

お客さんは僕らだけになり、菊地さんも一緒に飲みながら
ホテル時代のなつかしい話しになりました。
(優子さんも勝恵も同じホテルでかわいがってもらった後輩です)
菊地さんとほぼ毎日飲んでいたあの頃を思い出すなつかしい夜でした。

最後にコート・デュ・ローヌのワインを飲みながらちょっとつまみにと
白レバーとフォワグラのムースを出してくれました。・・・・完敗です。
哲学・理念・料理すべてにおいて完全に惨敗な夜でした。
いつまでも超えられない先輩だと感じた夜でした。
でも最高に楽しい夜でした。                    シェフ

ちなみに一見無愛想な人間が一人でやっている店です。
過度な期待はせずに行ってください。
そして落ち着いたらお酒をすすめてみてください。
たぶん楽しい人に変わります・・・