うちの町の町長
写真は先日、八千穂大石地区で行われた花もも祭りでお餅つきをしている佐々木定男佐久穂町町長(73)です。
決してこの写真は新聞などのメディア用のためにポーズを決めながら3~4回ついて 「ありがとうございました」と言われながら帰っていくその辺の市長さんや議員さんと同じ写真ではありません・・・。
午後1時をまわった頃、実行委員から
「町長もいらしたので、町長にもご参加頂いてこれから3回目のお餅つきを始めます」と放送が入る。
さすがに町長が餅をつくとなれば、お客さんだけでなく出店者も主催者も全員集まる。
あつあつのふかした餅米がうすに入る。きねを持った町長がこねはじめる。ゆっくりゆっくりとこねはじめる。きねには米がつきはじめ、周りから 「町長、水つけな!」「米がくっついてるから水つけな!」と声がとぶ。(さすが田舎の年寄り、特に町長だからといって敬語は使わない・・・その辺も僕は好きである)
それでも町長は水をつけずに黙ってこねながら餅米をつく。ようやく餅米がまとまりだした頃、きねに一回だけ水をつけ町長が言う。「最初っから水ばっかつけるから、割れた餅になっちまうだよ!」
・・・誰もが静かに納得をした。それからまた町長は餅をつき始める。
それでも町長は73歳という高齢。しだいに周りから 「そろそろ誰か町長と変わってやれや」「町長もいいぞ」などと声がかかる。それでも静かに餅をつき続ける。
それからまた数分。このまま町長は最後までお餅をつき続けるだろうとみんなが思い始めた。
だからみんな今度は応援するように 「ヨイショ!ヨイショ!」と声を出し始める。もう誰も 「町長と変わってやれや」と声を出すものはおらず、「ヨイショ!ヨイショ!」とみんなで声を合わせ応援をする。
最後によもぎをあわせ草餅ができあがった。
15分近い長い間、町長はたった一人でみんなで食べるお餅をついてくれた。
「食べたい方は並んでください」と放送が入る前からみんなが並んだ。
すごい長蛇の列で並んだ。
ちょっとづつだけどみんなが食べれた。
「おいしい。おいしい。」と言ってみんなで食べた。本当においしいお餅だった。
僕はずっと町長の近くで見ていた。その姿を見て久しぶりに涙が溢れ出た。
ハンカチを使うくらい涙が溢れ出た。
僕はこの町長のいる佐久穂町で良かったと思った。
僕はもともと 佐々木町長が大好きだけど、このお祭りで本当に尊敬する人に変わった。
何となく大げさかもしれないけど、このお祭りで見た町長の姿に
こうなればいいなと思う町の縮図を感じた。
町のトップをやっていれば毎日色んな人から 「やいの、やいの」とバッシングがとばされる。
でも黙って最後まで自分の信念を貫く。
もちろん大切なことはきちんと伝え納得をさせて最後まで貫く。
だから僕は 「ヨイショ!ヨイショ!」と大きな声でこれからもずっと応援をする。
そしたらたぶんみんなでおいしいお餅が食べれるような気がするから・・・ シェフ