『またお客様を失うかな…』

『素敵で嬉しいことが
あったからあえて書きました…』

僕は食物アレルギーとかではないのに、「これは食べられない…あれは嫌い」とかいう
食べ物の好き嫌いがある人間が心底大嫌いです。
(理由にもよりますが)

レストランを経営して以上、経営存続に関わるタブーな発言ですが書きます。

理由の一つは
食材には一切の罪はありません
もともと みんな人間に食べられたくて生まれてきたわけでないのに(これは野菜に関しても)
勝手な人間の生きるために、いのちを落とされた上に「臭いだの、キモいだの、食感が…だの」
正直ホント腹立たしいくらいうるさいです!
僕らは色々な命をいただいて、こうやって生きているのです。
だから「いただきます」なのです。
だから、おばあちゃんたちが言う「米一粒も残しちゃいけないのです」
(これは戦後の食糧難からかもしれませんが)

もう一つの理由は、何でも普通に食べれるという当たり前のことが『とても幸せなことなんだ』ということがわからないレベルの人だからです…

6月10日は息子シエナの誕生日でした。
今年で16歳になりました。
知ってる人は多いと思いますが、シエナは生まれた時から、重度の小麦と卵の食物アレルギーを持っています。この成分を含んだ食べ物を食べるとアナフィラキシーショック(スズメバチに刺されまくった状態)になり、生死に関わるため救急車を呼ぶことになります。小さい頃は(岩村田の有名な某老舗和菓子屋さんのお菓子)や(全国でも有名な煎餅屋さんのせんべい)の成分表の書き間違えによって死にかけたことがあります。

だから、シエナが生まれてからの16年間、我が家には小麦と卵というものの存在はありません。
そのせいか、今年中学になる娘は卵の割り方ひとつ知りません…

我が家には普通のパンやケーキも一切存在しません…

クッキーやバームクーヘン、プリン、カップラーメン、ソーセージやハム、マヨネーズ、冷凍食品…あげ出すとキリがないくらい一般家庭にある食べ物は存在しません

外出していてお腹が空いてもコンビニは何の役にも立ちません…
「えっ!おにぎりがあるじゃん?」って思う方もいるかと思いますが成分表を見てください。ほとんどが食べられません…

子供が好きなお祭りや縁日にも行きません。テキ屋さんの食べものはまさに小麦 卵の極みだから、
たぶん本人は友達といっても、一人だけ見ているだけの辛い思いをするだけなので行きません…
それでも中学くらいから割り切って花火大会くらいは行ってます

当然、外食なんてウチではできません
ファミレスは成分表はありますが、たとえ大丈夫と言ってもマニュアルにそった対応のため断られます
個人店では「大丈夫ですよ」っと言ってはくださるけど、かえって対応に不安を感じる年配の方のお店は何かあったら怖いのでやめます…
一番多いのは…
「すいません、息子がアレルギーがあって」と下手の下手で言っても「あー、そういうお客さんはご遠慮いただいてて、すいませんね〜」ガチャ…と電話を切られたり、門前払いされます
最近ひどかったお店は、正月に初詣で息子と行った善光寺付近の有名な老舗うなぎ屋(Googleで検索1位2位のお店)は、まさに話し途中で勝手に電話を切られました…
その時息子は僕に「ごめんなさい」と何度も謝りました。本人は生まれてからずっと辛い思いをしているのに、僕のせいでっと謝っていました
その時の息子の顔は一生忘れません…

イタリア料理店の息子なのに、ウチの料理を食べたことはありません…

僕は料理人のくせに…
たぶんパン屋さんには5年くらい
ケーキ屋さんには3年くらい行ってません…
(行ったのも仕事の用事で?)

素敵なパン屋さんやかわいらしいケーキ屋さんは無しとしても、スーパーやコンビニのパンやケーキすら、我が家の玄関を通過したことはありません。

我が家のパンやケーキは基本優子さんが焼きます。
もちろん小麦、卵は使わない
それでも美味しさには限界があり、誕生日などはシャトレーゼや31のアイスケーキ 小麦、卵を使わないケーキを買ってきますが、贅沢は言えない立場ですが、やっぱり記念日は手作りと思ってしまいます

そんな今日、友人の津金舞子ちゃんがシエナに小麦と卵を使わないバースデーケーキを焼いてくれました。
彼女もシエナとシエナ以上の食物アレルギーを持っています。だから、すごい勉強をして素晴らしい技術と本当に親身になって焼いてくれます。
親の立場だけでなく、料理人としても尊敬します

写真のケーキがそれです
見た目も素晴らしいけど、とても柔らかく(米粉はどうしても切れないくらい餅のようになってしまいます…)そして、それ以上に本当に美味しいのです
舞子ちゃん本当にありがとうございました。

昨年の暮れ、SOCCAの岩﨑シェフがシエナにケーキを焼いてくれました。3月に息子の高校の合格祝いに舞子さんがお祝いのケーキを焼いてくれました。そして今回のこのケーキ、この16年間で我が家のダイニングに並んだケーキはこの3つだけです

ヒロッシーニはディナーに来店されると、必ず「アレルギーや苦手な食材はありますか?」っと聞きます。
これを読むと好き嫌いの多い人は言いづらくなるでしょう。それ以上に来なくなると思います
それでもお店はお客様に満足して帰っていただくことが仕事ですから言ってください。
きちんと料理は作らせていただきます。

それ以上にたぶん、このブログを読んで、また地元のお客様をおもいっきり減らしたはずです…

このブログは、うまく書けば素敵な話になったと思います
たぶん刺々しく、イラっとした人がだいたいだと思います。 それでも何でも食べられることは、当たり前だけど幸せなことなんだと感じてほしいのです。
好き嫌いの多いお子さんを持つ親御さん、そしてそれなりの大人の方にはわかってほしいのです。

「好き嫌いは個人の自由だろ!」って思われた方、争うつもりで書いてませんので来店されなければいいだけなのでご遠慮ください

もしよかったら一週間小麦と卵を使った食べ物を一切口にしない生活をしてみてください。
パンや麺類だけでなく、色々な製品の成分表を見てください
たぶん、一週間生活できないと思います。

当然、僕のお店はパスタが主体なので来れませんし、僕がそれをやったら経営は成り立ちませんが

息子が一番辛いとは思っていません
世の中には、食物アレルギーよりも、もっと深刻で大変な病気と闘っている人がたくさんいます。
チカラにはなれないかもしれないけど、その大変さや辛さに寄り添える人間、その辛さや大変さを日々理解する努力だけは怠らないようにしていきたいものです。

そんな息子は今朝も舞子さんのロールケーキをしっかり食べて学校に出かけました。     シェフ

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