『やる気のない休みに…』


1週間の仕事を終えて迎える日曜日には色々な日曜日がある
本当に朝から晩まで忙しく身体がくたくたで迎える日曜日
精神的に色々あって心がくたくたで迎える日曜日
ヒマな日が続き経営的に追い込まれ心も精神もボロボロで迎える日曜日など
毎週どれかっていうわけではない。
どこもくたくたでボロボロでない日曜日も当然あるけど
やっぱり自営業、くたくたな日曜日は多い…

今朝は何の予定も何かやるぞ?っという気分ではなかったので、家のまわりに置いてある鳥の巣箱の周辺の茂った草木を片付け、それから2時間ゆっくりと鳥の鳴き声を聴きながらコーヒーを飲んでいました。

12時を迎える町のチャイムが鳴り響き、頭の中で『今日のお昼はどうしよう?』ってことに

なんにも予定のない日曜日のお昼は、ほかの家庭と同じで(僕の見解だけど…)夕飯のことも考えて冷蔵庫にある何かあり合わせで済ませるか
僕の場合は、仕事がら一人でランチに行くことが多い
日本料理の気分なら、お寿司の気分、フレンチ、イタリアン?
朝の気分で少し遠方でも出かける

そんな今日は、誕生日の夜から体調を崩して学校をずっと休んでいた娘がようやく元気になってきたのと、僕も料理を作るような気分ではなかったから…

12時のチャイムから数分で、2年前までオーナーをやらせてもらっていた、いまは足立夫妻に譲り二人が経営するウチからすぐの場所にある『キッチンえみゅー』さんに出かけることに決まりました。
それまで(この数ヶ月)えみゅーに行こうかな? って感情はなく
たまには…とか、そんな理由でもなく、急にキッチンえみゅーに行きたくなりました。

2013年、自分の生まれ育った町、佐久穂町に恩返しの思いも込めて、町の食材をふんだんに使ったアンテナレストランを開きました。
ちょうど今頃は、レストランの外観、内観はほとんど仕上がり、スタッフみんなでメニューの試作をしたり、食器が届いたり、新しいスタッフの研修をしていた時期でした。

僕の中では不安だらけで誰にも知られることなく、オープンしたヒロッシーニ開業の時よりも、夢にあふれていたヒロッシーナのオープンの方が、今でも忘れられず鮮明に覚えています

ヒロッシーナをやるか?やらないか?ギリギリ最後まで決まらなかったことがあります。
その理由は銀行の融資でも、僕自身の2店舗への不安でもなく、この人の決断待ちでした。
この人とは…足立の奥さんの勝恵(まさえ)です。
もう20年近く前からウチで飲む時、足立んちで飲む時など勝恵が必ず料理を振る舞ってくれました。
一流レストランの料理とかではないけど、普通の和食屋さん、中華料理、洋食屋さんのレベル以上で家庭料理だったら三つ星のシェフが作っても(気合いを入れられたら微妙だけど…笑)絶対敵わないレベルでしょう。
だから彼女にヒロッシーナの料理人として働いてほしかったのです。

オープンした頃は売り上げもあるしテンションも当然高い
勝恵の料理も伸び伸びしていて、僕の目には狂いはなかったと思っていました。

真冬を迎える頃には、人の動きも悪く当然売り上げも落ちます
バイトの人件費も考えなければいけないから、朝から晩まで勝恵が働き、原価率にもうるさくなりました…

よく書店に並んでいるビジネス書に書かれている『素晴らしい人材をヘッドハンティングしましたが…』
まさにそれになっていました。
素晴らしいアイディアを自由な時間に自由に考えてきた人材に
雇った以上、毎日毎日箱詰めでたくさんの仕事をさせ「何かアイディアはでないのか!でないのか?」とプレッシャーをかけ、追い詰め本来あるはずの能力も出せなくさせてしまう…
僕もそんなトップになっていました。
ことあるごとに原価率を言い、ほとんど毎日仕事帰りに寄っては『しょっぱい、甘い』などと注意をし、知らず知らずのうちに追い詰め圧力をかけているそんなトップになっていました。
そんな精神状態では美味しいものなど作れるわけはないのです。

もともと足立夫妻とは、ヒロッシーナをやるにあたって、軌道に乗せるまでの3年間は僕が経営をし、その後足立夫妻に譲る約束をしていましたが、経営の悪化やスタッフ不足などで結局2年で足立夫妻にお願いをすることとなりました。
時間が経った今だから話せる話です。

そんな久しぶりに行った今日
僕は昔と変わらず、気になるお惣菜を何品かと白州のハイボールを頼みました。ハイボールには、あの頃と変わらずミントとライムが入っていました。
夫妻二人になって、メニューや装飾だけでなく、店も二人の雰囲気も2年前とはだいぶ変わっていました。
その中でも、いちばん変わっていたのは、いつもいつも食べていたお惣菜の味でした。
口に入れた瞬間、香りをかいだ瞬間、ふとあの頃に戻ることって誰もがあると思います。

最初に食べた切り干し大根の味、チョットしょっぱかったけど、ずっとずっと昔、何かある度に作ってきてくれていた大好きだった勝恵の味でした。
涙が込み上げてくる味でした。
僕が作れなくさせてしまっていた味でした…
心の中で、この味がほしくて、この頃の時間に落ち着きたくて、だから今日急にえみゅーに行きたいと思ったのです。

久しぶりに何にもやる気の出ない休みだったので、朝のコーヒーとえみゅーの料理に本当に癒されました。

今日は精神的にくたくただけど、今日のうちに絶対ブログを書きたかったのは、25年来の付き合いの足立夫妻への敬意かな…