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2016.02.24

いらっしゃいませ

  
ヒロッシーニに来店されたことがあるお客様はご存知かもしれませんが、入り口のドアはガラス張りになっています、そしてその横の壁もガラス張りになっています。当初の計画ではただの壁でした。
10年前、あと1カ月でいよいよオープンという、追い込みの時期
オーブンや冷蔵庫など厨房機器が搬入され、ようやく僕の立ち位置が決まりました。
(お店で僕が一番立っている場所です)
その時、ドアの横のただの壁を見た時に失敗に気づきました。階段を上がって来たお客様がドアを開けるまで僕はお客様に気がつかないことを…
急遽、建設屋さんにかなりの無理を言って壁をガラスに変えてもらいました。

理由は2つありました…
初めての独立開業、自分のお店にわざわざ階段まで上がって来て下さるお客様を誰よりも先に僕が気づき、外にも聞こえるような大きな声で「いらっしゃいませ」と言いたかったからです。
そして、もう一つはみなさんも経験があると思いますが、レストランに入ったけど、ずっと店員さんが自分に気づいてくれず残念で不快な思いをしたことを…
それを一番避けたかったからです。

とはいえ、オープンキッチンで気づいていても「いらっしゃいませ」も言わない料理人も世の中にはたくさんいますが…

そんな理由であのガラス張りの壁があります。今では階段を上がってくるお客様を僕が一番にキャッチし「いらっしゃいませ」と声をだすと手が空いているスタッフが入り口まで急いで行き、できるだけドアを開けて「いらっしゃいませ」とお出迎えをします。
(ちなみにヒロッシーニのドアは通常の逆に造っています。お迎えするという意味で、引き戸になっています…)
みんなが忙しい時は当然僕も走っていきお迎えをします。そしてスタッフ全員が必ず「いらっしゃいませ」を言います。ご予約のお客様でしたら、「今日はご予約ありがとうございます」フリーのお客様でしたら「わざわざご来店ありがとうございます」雨や雪の日なら「お足元の悪い中わざわざありがとうございます」とスタッフ全員が言います。
ご予約の際に、おまかせ料理をお願いされているお客様や団体のお客様には「今日はよろしくお願いします」っと厨房からでも必ず大きな声で言います。

レストランやサービス業なら当然のことです。ブログで書く必要も無いくらい当然のことだと思います。どのお店も当然マニュアルにあると思います。

『それでも本当のいらっしゃいませを言おうと思います』
それは、数あるお店の中で自分のお店を選んでくださった大切なお客様だからです。
「いらっしゃいませ」という言葉はその大切なお客様をお迎えする『おもてなし』の一番最初の動作だと僕は思います。もっと細かく言うと予約の電話からになりますが…

僕はレストランに行く際は、(日本料理も当然、居酒屋さんでも)必ず予約を入れます。時間や予算、電話番号を伝え、そして最後に「名前は中山と言います。佐久平でヒロッシーニというお店をやっている中山と言います。当日はお世話になります、よろしくお願い致します。」と必ずお店の名前も名乗って予約を入れます。
これは自分を高く見せるためではありません。同業者の中では案外普通のことです。ヒロッシーニの予約でも、軽井沢の名門フレンチのオーナーの方でもそこで働くスタッフの方でもだいたいの方が名乗って予約を入れて下さいます。(こそこそと偵察のようなタイプもたくさんいますが…笑)
そして「当日はよろしくお願いします。」と挨拶も入れて予約をして下さいます。それはこの世界では食事に行くことが一番の勉強だからです。だから受け入れるお店側も当然気を張ります
(オーナーシェフ、従業員に関係なく)
変わった食材などあればわざわざ注文をしてお待ちします。お互いが勉強になるからです。

そんな先日、数年前にできたレストランに予約を入れ出かけてきました。
お店は少し忙しくなり始めている状況でしたが、「いらっしゃいませ」の声に気づき、シェフはこちらを向き一旦仕事の手を止め、急いで手を洗い入り口に来て下さいました。「初めまして」の挨拶と同時に握手をされ「いらっしゃいませ、今日は来て下さり本当に嬉しいです。よろしくお願いします」と言って下さいました。
僕らも「お世話になります」と伝え、席に着き楽しい食事の時間を過ごしました。食事も大変美味しかったのですが、常に店内の温度や周りのお客様を気にかけている姿、本当に勉強になる時間となりました。
この素晴らしい、おもてなしのできるお店
今思うと、シェフのあの僕らをお迎えしてくださった「いらっしゃいませ」の数秒間が既に物語っていた気がします。

芸術作品のような料理が持てはやされるこの時代
料理の『見た目』も当然大切ですが、それ以上に料理の味とお客様への『配慮の目』をもっと身につけなければいけないと感じました。 シェフ

ちなみの写真は、10年前のオープンした時の写真です…笑

2016.02.19

”そんな”生産者さん

  
先日のラジオでもその話になりましたが、僕は一年の中で最も野菜が美味しい時期は2月だと思っています。
信州、特に佐久に住んでいると、2月がっと思われる方が多いと思います。
寒さ厳しいこの地では、年が明ければ野菜を作る人はいません。誰もがこの季節はスーパーに並ぶ野菜を買っているからそう思うと思います。

それでも、そんな寒さ厳しい2月でも美味しい野菜をヒロッシーニで提供できるのは、とても勉強熱心で、情熱あふれる有機農家「のらくら農場」萩原さんと「あさひや農場」関谷さんがお客様(個人宅配やレストラン、自然食品店など…)に向け色々な努力や研究、貯蔵庫の拡大などをして下さって、この地ではあり得ない3月近くまで買うことができるのです。

温室というより雪よけのためのハウスの中でポキポキに凍った小松菜やホウレン草など力強く育っている甘い葉野菜、雪の下で眠る畑のターツァイ、地下榁の中で保存された滋味溢れる大根やカブにゴボウや白菜、そして熟成されどんどんと甘くなるじゃがいもや人参、そんな野菜たちが皿の上に集まる季節が『この2月なのです!』
寂しいことにそんな美味しい野菜もあと数日で終わりになります…

そんな昨日、あさひや農場の関谷夫妻がランチに来て下さいました。今年の出荷が落ち着いたこともありますが、自分たちの作った冬野菜がFacebookでは見ているものの、ヒロッシーニでどんな風に料理され、お客様に出されているのか、そんな意味も含めて来店して下さいました。

佐久鯉の燻製に添えられた葉野菜のサラダとそのドレッシングや今話題のじゃがいものフリット、人参のクリームソースのパスタなどなど…他にも何皿かお出ししましたが、写真を撮りながら、作り方を聞きながら召し上がっていってくださいました。
多分、作り方などは大切な個人向け宅配のお客様に提案するためだと思います。
そんな遠くのお客様の食卓に並ぶ料理の提案になるなんて、ホント料理人冥利に尽きます!

自分で野菜を作って、きちんと箱詰めをし、宅配業者さんに責任を持って玄関まで届けてもらう、そして美味しく召し上がってもらうためのアイデアやレシピを提案をする。当然色々なクレームももらいながら…

僕は”そんな”生産者さんが大好きです。そして、”そんな”生産者さんを本当に尊敬しています。僕のお店は”そんな”熱意と責任感を持った生産者さんたちがいなければ成り立ちません…本当に本当に感謝しています。
もう少しで今シーズンの野菜は終わりますが、一年近く本当にお世話になりました。また来シーズンも変わらずよろしくお願い致します。

そして、これからはこのお二人の共通の有機仲間で、同じように情熱を持った茨城と千葉の有機農家さんの野菜を使わせて頂きます。重ねてよろしくお願い致します。 シェフ

2016.02.17

父の背中

  
毎年この時期になると必ず父がいつもの沢に出かけ、天然のクレソンを採りに行ってくれています。
ヒロッシーニがオープンした年から毎年
他にもフキノトウやわらび、秋には野生のきのこなど野山を歩いて、たくさんのお店で使う山菜を採ってきてくれています。
そして、父が会社員時代に仕事の縁で知り合いになった、今では30年来の友人の野辺山の農家さんが、お店をだした息子さんのためにと1ヘクタール以上の畑を僕のためにと用意してくださり、ブロッコリーやキャベツ、白菜やかぼちゃ、ほうれん草や赤タマネギなどを作ってくれています。野菜の季節がはじまると週に2回くらい軽トラックで野辺山まで出かけ、トラックいっぱいの野菜を取ってきてくれています。
月曜日の朝、今年最初のクレソンがバケツ3杯程届きました!
やはり、寒の季節の水辺のクレソンは最高に美味しいです。

ただ、今年のクレソンは父が採りに行ったのではなく、父の会社員時代の同僚であり、50年来の親友の奥さんでした…
その父の同僚であり親友の方は、生まれつき身体に障害があり、生活にはなかなか苦労はありましたが、ズバ抜けた頭脳を持ち、通常ならそれなりに優れた経理が三人でする仕事を一人でこなしていたそうです。
それでも身体に障害があるため定年までは働けず、会社を退社し寝たきりの生活が15年くらい続き、数年前に亡くなられました。
今回クレソンを採ってきてくれた奥さんにお礼を伝えると、「かっちゃんも (父の呼ばれ名) だいぶ身体に無理がきかなくなり、沢まで降りることができないらしいだよ。それでも毎年息子のお店のために採りに行ってるから、どうしたもんか?」とお茶を飲みに来た時にボソッと言ったらしく、それでおばさんが変わりに採りに行ってくれたようなのです。
そうはいってもおばさんだって70歳を過ぎています。決して達者な年ではありません。
おばさんに何かあっては申し訳なく「クレソンは絶対必要なものでもないし、オレが休みの時にでも採りに行けるから無理しないでください」っと伝えると…
おばさんは「お父さんはうちの人が寝たきりになってからも、何十年間変わらず、毎週話しをしに出かけてきてくれただよ、最後の頃はかっちゃんのことがわからなくなってても友達だからと最後の最後まで遊びに来てくれただよ」
「だからクレソンくらいいいだよ」っと笑って帰られました…

僕のお店用の畑を作って下さっている野辺山の農家さんとも、似たような話を聞いたことがあります。

僕が小さい頃から父にはたくさんの友達がいました。
そしてこの歳になってもその友人の方は変わらず父を慕ってくれています。

僕は今年45歳になります。人との縁を大切にして、今からでもそんな父のような素敵な人生を送りたいと思いました。僕の場合はかなりマイナスからのスタートにはなりますが… シェフ

2016.02.08

Chocolate for peace

  
もう5〜6年になりますが、毎年2月最初の日曜日は、佐久平駅を挟んでちょうどヒロッシーニの反対側(佐久平駅浅間口)の隣、東横インさんの一階にある『元麻布ギャラリーさん』にバレンタインのチョコレートと絵を買いに行っています。

ヒロッシーニのオープンの時期と重なっているだけでなく、そのチョコレートと毎年展示されている絵にはきちんと意味があるため、僕の中では欠かすことのない一年に一度の日となっています。

『Chocolate for Peace』 

2016.2.4〜2.14

写真のチョコレートはJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)が活動しているチョコレート募金です。

最近知ったのですが、2006年ヒロッシーニのオープンした年と同じ年から始まったバレンタインの募金キャンペーンで、イラクのがんで苦しむ子どもたちが花を手に取り描いた絵が六花亭さんの協力をもとにチョコレートとなり、一つ500円で売られています。その500円のチョコレート代のおよそ8割近く約400円が募金となって、イラクの小児がんや白血病で苦しむの子どもたちの医療支援やシリアの難民キャンプでの妊産婦の支援、そして福島の子どもたちを放射能から守る活動にも使われています。
例えば、イラクの子どもたちのがんや白血病の話でなく、日本でもがんや白血病で苦しんでいる子どもたちがたくさんいます。遠いシリアの話でなく、身近にも同じように苦しんでいる人たちがいます。私たちの目の前では色々な募金活動が毎日行われています。

それでも僕は毎年同じように4種類のチョコレートをここに買いに行きます。

それは他の募金や支援金に興味がないわけでもありません。決して募金ケチでもありません。

そこにはきちんと熱意と愛を持った窓口があるからです。
昨日はギャラリーの担当者の大谷さんと(女性の方です)久しぶりに1時間くらいお話をさせて頂きました。

「このチョコレートの絵(缶の絵)を描いた女の子は12歳でがんを患っていて化学療法受けていた。2014年8月3日銃声が聞こえ村は「イスラム国」の戦士たちに襲われた。逃げ遅れた人々は捕まり改宗を迫られ、拒むと殺され、女たちはレイプされ性奴隷として売り飛ばされた…

この12歳の少女はともかく病院のある町を目指して逃げのび助かりました」…
大谷さんは、「例えばここにあるチョコレートを自分のお金で全部買うことはできます。だけどそれは違うのです。自分で100個買うのではなく、一つだけでいいから このチョコに込められた願いを知ってもらって100人の人たちに買ってもらえれば…」と話されていました。

僕は決して募金ケチではありません。コンビニのやる気のない兄ちゃんのレジ横にある募金箱や時々家にやってくる怪しい募金集めには一円も払いたくないだけなのです。
もし僕が女性なら、バレンタインにはスーパーやコンビニのチョコでなく、ましてや高いブランドチョコでもなく、こんな想いのこもったチョコレートを大切な人に贈りたいものです。

今年も変わらずバレンタインデーには、この4つのチョコを自分の子供たちとにあげます。空いた缶間は飾ったり薬入れやピアス入れにします(^^)
そして、チョコレートと一緒に今年も素敵な一枚の絵に出会うことができました。

とても素敵な絵で気に入ったのですが値段が書いてなく、さすがに高かったら諦めようと恐る恐るお聞きすると僕でも買うことができる絵でした。

大谷さんにこの絵のお話を聞くと、この展示されてる絵は商売目的ではないのそうです。この絵を描いたおばあちゃんは障害を持っている方で、ただそれでも気に入ってくれる方がいて絵が一枚売れると、そのお金で大好きな絵を描くための絵の具代になるそうです。

このおばあちゃんは必ずきちんとメイクをするおばあちゃんで赤い口紅が大好きだそうです。そんな素敵なおばあちゃんが描いた絵だと思うととても嬉しくなります。

まだ14日まで展示はされています。ぜひ見に入ってほしいです シェフ